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【がんになりやすさ1.9倍】小児期の逆境体験が健康に及ぼす影響

育った環境は身体をつくるといわれているように、慢性的なストレスはあらゆる病気を招く危険があります。私自身も臨床の中で多くのがん患者さんのお話をお伺いするにつれ、小児期に酷く傷ついた経験がある方が多いなという印象を持っていました。

その関係性を明らかにしたのがACE(Adverse Childhood Experiences:逆境的小児期体験)研究です。ACE研究は、小児期の逆境体験と将来成人になってからの身体疾患や精神疾患になる関係について明らかにしています。この関係を知ることで、今からでもできる対策があります。この記事では、どんな関係があるのか、どんな対策があるのかを紹介したいと思います。

小児期での逆境体験を経験し、今も苦しんでいる方々が苦しみから解放され、病気からの回復への道標になれば幸いです。

目次

育った環境は将来の健康問題に関係する

ACE(逆境的小児期体験)研究が明らかにしたこと

ACE(Adverse Childhood Experiences:逆境的小児期体験)研究では、さまざまな子供時代の逆境と、大人になってからの身体疾患や精神疾患の発症に科学的な関係性があることを明らかにしています。

逆境には、暴力・暴言・ネグレクトなどの虐待を受けた体験、親のうつ病や身体疾患などで養育環境が整っていないなど家族機能が失われている状態で育ったこと、親や兄弟との死別、貧困家庭、いじめなどがあげられます。

ACE研究では、小児期の家庭内の逆境に関するリスク因子を得点化すると、得点の高さに応じて広範な成人期の心身の健康問題が増加することが確認されました。

その健康問題とは、心臓疾患、自己免疫疾患、がん、薬物乱用、アルコール依存症、うつ病、自殺企図、DVなど)で、小児期の逆境体験と心身の健康問題との関係性は、繰り返し行われた多くの研究で裏付けられています。

日本人の32%が一つ以上の逆境体験を経験

日本における研究(藤原ら、2011年)によれば、日本人の32%が一つ以上の逆境体験を経験しているとされ、日本においても、3人に一人は小児期に何らかの逆境体験があることがわかっています。

これらの研究結果から、3割の方が、心身の健康問題を害するリスクを抱えていることがわかります。

なぜ、小児期の逆境体験が健康を害するのか

なぜ、小児期の逆境体験が健康問題に関係するのかを知るために、まずは正常なストレス反応についてご説明いたします。

正常なストレス反応とは

正常なストレス反応では、身体はストレスに対応するために、免疫反応を促し戦闘準備を整えるなどすばやく正確に反応します。そして、ストレスの多い出来事が終わると闘争・逃走反応は収まり、体内のシステムは回復し、正常な状態に戻ります。

一時的にストレスが起こった時に、「胃が痛い」「胸が詰まる」など身体反応が現れたりしますが、ストレスが収まると、身体反応も収まってくることを経験されたこともあるのではないでしょうか。

では、なぜ、小児期の逆境体験が大人になった時の健康問題に関係するのでしょうか?

有害な小児期のストレスが脳を変化させる

ネガティブな経験が長く続くと、ストレスホルモンの分泌をコントロールする遺伝子発現が変化し、炎症性のストレスの過剰反応を引き起こして、成人期の病気が発症しやすくなります。

慢性的なストレスは、ゆっくりと少しずつ、私たち身体の組織を損傷していきます。体内のシステムが繰り返し、過度の刺激を与えられると、ストレスに対する反応が鈍り始めます。一見、良いことに思うかもしれませんが、ストレス反応が鈍るということは、適切に防御態勢を取り元にもどるという正常なストレス反応ができにくくなるということです。

つまり、多くの慢性的なストレスを感じつづけると、ストレス反応が止まらなくなるということになります。そうなると、常にストレス反応のスイッチが軽く入った状態となり、少量の炎症物質が絶えず産生されます。そして、ストレスホルモンが継続的に分泌され、サイトカインの活性化や炎症を引き起こすというスパイラルに陥ります。

なぜ、子供はストレスのダメージを受けやすいか

成長期の子供は、脳の中にある自律神経などに関連した視床下部などHPA軸が発達段階にあります。まだ若い脳が何度も繰り返し過覚醒や不安な状態にさらされるとHPA軸は何度も活性化され、体内では常に炎症を引き起こす神経伝達物質が発生している状態となります。

小児期のストレス要因や逆境は、より深い傷跡を残します。虐待や家族の機能不全などの体験によって、視床下部などHPA軸のストレス反応が変化し、炎症を引き起こすストレスホルモンが生涯にわたって増加する可能性があります。これらによって、長く、ストレスホルモンにさらされる危険が高くなるということです。

言い換えると、脳が発達段階にある子供の頃に、繰り返しストレス状態にさらされると、慢性的なストレスのせいで、ストレス反応を調整する遺伝子がオフになりやすく、脳は生涯にわたって正しいストレス反応の調整ができなくなるのです。

具体的には、過敏性腸症候群の女性の半数以上は、小児期の逆境体験を抱えています。その他にも、小児期の逆境体験が成人期の身体疾患を発症するリスクについて、以下のように示された調査もあります。

  • がん 1.9倍
  • 糖尿病 1.6倍
  • 脳梗塞 2.4倍
  • 虚血性心疾患 2.2倍     (ACE得点が4点以上の場合)

傷つきやすい人とそうでない人の違いは何か

子供の頃に逆境体験があっても、誰もが健康問題を抱えるわけではありません。困難な状態にあっても、それを乗り越えて安定している人もいます。どんな違いがあるのでしょうか?

回復力のある人は、適度な「ふらつき」を持っている

心理学的な表現での「ふらつき」とは、苦しいことや逆境の重みにふらついても、倒れずに持ちこたえる能力のことです。この「ふらつき」も持っている人はストレスに対してうまく対処できていきます。

ところが、慢性的なストレスを経験した子供は、ほとんどの場合、バランスを取り戻す能力が身に付くほどには成長していません。自分自身の困惑や周囲の大人の感情的な混乱を理解しようとして、自分でもコントロールできない状況から抜け出せなくなってしますのです。

小児期や思春期の適度な困難を経験すると、対処能力、回復力、そして大人になってからの慢性的な消耗性の痛みに向き合う力を身につけることができます。しかし一方で、全く逆境体験がない人は、逆境の経験が多い人と同様に、困難に対して無防備になるけいこうがあることもわかってきました。

ある程度の困難な経験は、回復力を高めるチャンス

ストレスがすべて悪いわけではありません。子供のころから、標準的なストレスの対処法を学ぶことは健全な発育のために必要なことでもあります。

標準的なストレスによって、自分自身をなだめること、立ち直し、回復力を身につける術を学ぶことは、自分らしい人生を歩むためには大切なことです。

秘密の代償は大きい

小児期の逆境体験の多くは、密室で起きる慢性的なストレス要因が問題となります。たくさんの人がいるところでは起きにくく、子供にとっては秘密の状態となります。逆境体験は、子供にとっては口にしずらく、無かったこととして記憶の奥底に封印するという対処を自然としてしまっている場合も少なくありません。その場合、大人になっても、秘密を抱え続けることとなります。それが、知らず知らずのうちに、心身にどんなダメージを与え続けているのかもわからずに窮地に陥ることさえあります。

原因のわからない体調不良に見舞われても、なぜ、体調不良が起こっているのか、心身の病気になっているのかがわからないまま、苦しんでいる場合もあります。

そのような苦しい状況から脱するにはどのような方法があるのでしょうか。

小児期の逆境体験からの回復への道標

では、どのように本来の自分を取り戻していけばよいのか、いくつかの対応策をご紹介いたします。

小児期の逆境体験を表現する

「ストレスには良いストレスもあること」「ストレスに対する反応は、行動を起こしたり助けを求めたりする必要があるという警告だ」と認識するだけでも、ストレスそのものに対する長期的な悪影響は少なくなります。

そのためには、どんなことにストレスを感じているのかを、自分自身が自覚することが必要となります。

相談してみる

信頼している人が傍にいる場合には、相談してみることも良いでしょう。うまく表現できなくても、今、困っていることを聞いてもらうだけでも気持ちが楽になります。

公的な相談場所として、厚生労働所が行っている無料相談(電話、SNS)もありますので、活用するのも良いでしょう。https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/

書きだしてみる

話を聴いてもらえる医療従事者がいない場合には、今の気持ちや困りごとなどをノートなどに書き出してみる方法もあります。自分の気持ちを言葉で表現してみることで、新たに気づくこともあります。

苦しみの表現方法として、絵に描いてみて深層心理に気づくアートセラピーなども良いでしょう。

ACEスコアを調べる

どの程度の小児期の逆境体験を受けているかを得点化するACEスコアがあります。ご自身のACEスコアを知りたいと思われる方は、「ドナ・ジャクソン・ナカザワ,小児期トラウマがもたらす病ーACEの実態と対策,パンローリング株式会社発行,2018 」を参考になさるか、もしくは、当相談室のお問い合わせください。

瞑想する

さまざまな瞑想法がありますが、いくつか代表的な方法をご紹介いたします。どの瞑想法も取り組み始める際には、専門家の指導を受けることをお勧めいたします。

マインドフルネス瞑想

脳を修復する方法といわれており、感情を抑え、他者に対して柔軟に対応し、適切な判断を下すことに役立つといわれています

慈悲の瞑想

人が元来誰でも持っている慈しみの心を養うトレーニング方法で、自分と他人に対する感情や思い込みと正面から向き合い、長年の憤り、敵意、無関心などへの気づきを促進し、解放していきます。その中で、自分への深い愛情が生まれてくることに役立つといわれています。

ヴェーダ瞑想

自分を見つめる瞑想ともいわれ、古くから伝わる幸せに生きる智慧(テーマ)に沿って過去の記憶をたどりながら、じっくりと自分自身の心と向き合っていきます。自分に向き合うことで、自分の大切にしていることや苦しみの原因等に気づいていくプロセスを支えていきます。

当相談室で行うヨーガセラピーでは、上記瞑想も行っております。

その他、動く瞑想ともいわれる、太極拳や気功なども良いでしょう。

身体を動かして緊張を緩める

身体には、長年のストレスに対する闘争・逃走反応による凍り付き状態によって、各部分や筋肉の緊張が蓄積されています。凝り固まった筋肉の緊張をやわらげ、筋肉をほぐすことで、炎症反応を和らげることに役立ちます。

ヨーガセラピー

ヨーガを日頃から実践している人は、炎症反応を示す値が非常に低いことがわかっています。PET検査によると、ヨーガの後には、脳の警告センターである扁桃体への血流量が減り、前頭葉などへの血流量が増えることがわかりました。つまり、ヨーガを行うことで、脳の機能が改善して興奮を静める物質が増えることで、うつ状態や不安を緩和することが科学的にも証明されています。

当相談室でも、ヨーガセラピーの無料体験を受け付けておりますので、一度体験してみてはいかがでしょうか?

専門家への相談

心身の病気を抱える患者のほとんどの場合、解消できない悲しみや不安、心の傷を抱えています。そうした問題を向き合うためには、心理療法が必要だといわれています。

自分だけでは解決できない問題は、専門家に相談し、過去をひも解くために手を借りることが必要となる場合があります。

事前無料相談のご案内

まちの看護相談室り~ぶでは、心身の不調やストレスを抱えた方へのカウンセリングを行っております。

ご自身の抱えている困りごとや悩みがその対象になるのか、どうにかしたいけれどどこで相談して良いかわからないなどと悩んでいる方のために事前無料相談を行っております。ACEスコアをお調べすることもできます。当室で解決できない悩み事の場合には、適切な場所をご紹介させていただいております。

まずは事前無料相談をご利用ください。

※なお、ZOOMによるオンラインでのご相談となります。(30分以内)

最後までお読みくださりありがとうございます♪ 

【本記事の 引用・参考文献】

  • ドナ・ジャクソン・ナカザワ,小児期トラウマがもたらす病ーACEの実態と対策,パンローリング株式会社発行,2018 
  • 令和元年子供の貧困実態調査に関する研究報告書(内閣府)資料

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